口腔外科ではどんな薬を使って治療をするの?

口腔外科は、その名前の通り外科治療に分類される医療行為です。
もちろん、全てが外科的というわけではなく、内科的なアプローチによる治療も行なわれています。

外科と内科の面を持っていることもあり、一般の歯科医院よりは多くの種類の薬を使い分けて、治療に当たっています。
口腔外科で使われる機会のある薬について、紹介します。

薬の適応について
現在、我が国ではいろいろな薬が処方されていますが、それぞれの薬には、適応(使っていいという意味です)となる病気が決められています。適応となる病気でなければ、原則的に処方することは認められてはいません。

腔外科でよく使われる薬
口腔外科で最もよく使われる薬は、抗菌薬と消炎鎮痛薬ですが、それ以外にもいろいろな薬が使われます。比較的頻度の高いものを紹介します。

抗菌薬
抗菌薬とは、細菌を殺したり、細菌の増殖を抑えたりする効果のある薬です。いわゆる化膿止めです。
抗菌薬は、種類がとても多いですが、よく使われるのはβラクタム系やマクロライド系です。キノロン系が使われることもあります。

口腔外科領域の感染症の治療には、ペニシリン系の抗菌薬が効果的です。また、上顎洞炎や慢性骨髄炎の治療では、マクロライド系の抗菌薬が使われます。
以前は、抜歯後の感染予防目的に3日間処方したこともありましたが、近年問題となっている薬剤耐性菌を作らないために、簡単な抜歯なら処方しない、親知らずの抜歯でもペニシリン系を1日間だけといったように、予防目的ではあまり使われなくなりました。

消炎鎮痛薬
消炎鎮痛薬とは、抜歯や神経の治療をした後などの処置後に使う、いわゆる痛み止めことで、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs:エヌセイド)が使われます。

消炎鎮痛薬は、いろいろな種類があります。子どもから大人まで幅広く使われるのがアセトアミノフェンという痛み止めです。副作用が少なく安全性が高いのが特徴です。

アセトアミノフェンでは効果が乏しい時には、もう少し効きの良い痛み止めを処方します。たとえば、プロピオン酸系(商品名:ロキソニンなど)や、フェニル酢酸系(商品名:ボルタレンなど)です。効果も高く副作用が少ないものとしては、アリール酢酸系(商品名:ハイペンなど)があります。

近年、アセトアミノフェンにトラマドール塩酸塩という成分を配合したタイプ(商品名:トラムセット)も登場しています。
どのタイプの痛み止めにするのかは、痛みの程度や副作用のリスクを考えて決められます。

抗ウイルス薬
単純疱疹や帯状疱疹という病気を耳にしたことはありませんか?
単純疱疹は単純ヘルペスウイルスが、 帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で起こるウイルス性疾患です。名前は異なりますが、どちらもヘルペスウイルス科に属するウイルスです。

ウイルス性疾患には、抗菌薬は効果がありません。ウイルス性疾患に使われるのは抗ウイルス薬です。
抗ウイルス薬は、ウイルスごとに種類が異なり、違うウイルスには効果がありません。ヘルペスウイルスの場合は、アシクロビルというタイプの抗ウイルス薬を処方します。

抗真菌薬
真菌とは、いわゆるカビのことです。真菌は細胞の構造上の違いから抗菌薬は効きません。
口腔外科でよく見られる真菌はカンジダ・アルビカンスという真菌です。カンジダ・アルビカンスには、アムホテリシンBという抗真菌薬を処方します。

筋弛緩薬
筋弛緩薬は、筋肉の強ばりをとり除く目的で、筋肉痛を伴う顎関節症の場合に主に処方されます。

抗けいれん薬
口腔外科と抗けいれん薬というと一見すると関係なさそうですが、抗けいれん薬のカルバマゼピン(商品名:テグレトール)は、三叉神経痛という顔面部に生じる非常に激しい痛みを伴う神経痛の治療によく効くことが知られています。
口腔外科では、三叉神経痛の治療薬として、カルバマゼピンが第一選択薬として使われています。

ビタミン製剤
口腔外科でよく使われるビタミン製剤は、ビタミンB12製剤であるメコバラミン(商品名:メチコバール)です。この薬は、顎先の感覚を支配している三叉神経に生じた神経麻痺の治療などで使われます。

血液に作用する薬
抜歯後等、出血が落ち着かない時には、止血目的で抗プラスミン剤という薬が処方されることがあります。この薬は、トラネキサム酸(商品名:トランサミン)という薬で、止血目的以外にも、口内炎の治療にも使えるという特徴を持っています。

漢方薬
漢方薬も口腔外科では使っています。口腔外科の領域では、舌痛症や口腔異常感症等の治療で使われる機会があります。漢方薬は、とても種類が多いので、体調や症状をみて処方する薬を決めます。

外用薬
外用薬とは、うがい薬や軟膏のことです。うがい薬といえば、ポピドンヨード(商品名:イソジン)が思い出されるかと思いますが、最近ではイソジンの効果が強過ぎるという指摘もあり、炎症を抑える効果の高いアズレン(商品名:アズノールなど)が使われる機会が増えてきました。
軟膏は、口内炎の治療や入れ歯によってできた傷などの治療で使われています。

その他
テガフール(商品名:ティーエスワン)などの抗がん剤を処方することもありますが、あまり一般的ではないので、省かせていただきます。
輸液等の注射製剤も使いますが、処方薬ではないので省略します。

まとめ
口腔外科で処方頻度が高いのは、抗菌薬と消炎鎮痛薬です。この2種類は、一般の歯科医院でも頻繁に使われているので、歯科にはなじみ深い薬です。
これ以外も、抗ウイルス薬や抗真菌薬、筋弛緩薬など口腔外科で使われる薬は、非常に幅広く、一概に説明するのは難しいです。口腔外科医は、病気の症状をみて、日々適切な薬を処方するよう努めています。